健康診断で「コレステロールが高い」「中性脂肪が高い」と指摘されている方の中には、
「脂質異常症だと大腸がんになりやすい?」
「コレステロールが高かったら大腸カメラを受けたほうがよい?」
と気になる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
脂質異常症と大腸がんの関係については、これまでさまざまな研究が行われています。特に中性脂肪が高い人では、大腸がんとの関連を示した研究があります。
ただし、脂質異常症があるから大腸がんになる、あるいはコレステロールが高ければ大腸カメラが必須、という単純な関係ではありません。
大腸がんには年齢、肥満、飲酒、喫煙、運動習慣、家族歴(遺伝)など複数の要因が関係します。脂質異常症だけでなく、生活習慣全体を考えることが大切です。
脂質異常症とは、血液中のLDLコレステロールや中性脂肪が高い、あるいはHDLコレステロールが低いなど、血液中の脂質が基準から外れた状態です。
以前は「高脂血症」と呼ばれることもありました。
当院でも、高血圧・糖尿病・脂質異常症・高尿酸血症などの生活習慣病について診療を行っています。
脂質異常症は自覚症状がほとんどないことも多いため、健康診断の血液検査で初めて指摘される方も少なくありません。
脂質異常症では動脈硬化による心筋梗塞や脳梗塞などがよく知られていますが、近年では大腸がんを含め、さまざまな病気との関連についても研究されています。
脂質異常症と大腸がんについては、一定の関連を示す研究がありますが、現時点で脂質異常症そのものが大腸がんの直接的な原因であると断定できるわけではありません。
2025年に発表された複数の前向き研究をまとめた解析では、中性脂肪が高い群で大腸がんの発症リスクが高い傾向が報告されています。一方、総コレステロールについては大腸がん全体との明確な関連は認められませんでした。
過去の研究でも結果にはばらつきがあり、脂質と大腸がんの関係については引き続き検討が必要です。
そのため、
「LDLコレステロールが高いから大腸がんになる」
「中性脂肪が高ければ大腸がんがある」
という意味ではありません。
健康診断で脂質異常症を指摘された場合には、大腸がんだけを心配するのではなく、生活習慣病として適切な管理を続けることが重要です。
脂質異常症と大腸がんを考えるうえで重要なのが、共通する生活習慣や背景です。
脂質異常症は、食生活、運動不足、肥満などと深く関係します。一方、大腸がんについても、生活習慣との関連が明らかになっているものがあります。
国立がん研究センターでは、日本人における大腸がんについて、飲酒や喫煙をリスク因子として挙げています。また、肥満によって大腸がんのリスクが高くなることは「ほぼ確実」と評価されています。身体活動については、特に結腸がんのリスクを下げる方向に働くとされています。
「脂質異常症そのもの」だけを見るよりも、以下のような要因を合わせて考えることが大切です。
複数の要因が重なっている場合には、大腸がんだけでなく、さまざまな生活習慣病の予防という観点からも生活習慣を見直すことが重要です。
脂質異常症、高血圧、血糖値の異常、内臓脂肪型肥満などが重なった状態を「メタボリックシンドローム」といいます。
これまでの研究では、メタボリックシンドロームがある人では、大腸がんの発症リスクが高い傾向が報告されています。
ただし、その関連には肥満や高血糖などが大きく影響している可能性も指摘されています。
そのため、健康診断でコレステロールや中性脂肪だけでなく、
と複数の項目を指摘されている方は、生活習慣を見直す一つのきっかけにするとよいでしょう。
脂質異常症があるという理由だけで、すべての方が大腸カメラを受けなければならないわけではありません。
大腸カメラを検討する際には、脂質異常症の有無だけでなく、症状や検査結果、これまでの病歴なども合わせて考えることが大切です。
例えば、以下のような場合には大腸カメラによる確認を検討します。
当院でも、このような症状や背景がある方には大腸カメラによる確認をご案内しています。
また、脂質異常症の血液検査だけでは、大腸ポリープや大腸がんの有無を確認することはできません。
大腸がん検診では便潜血検査が広く行われています。
当院でも40歳以上の男女には、便潜血検査を毎年受けることをおすすめしています。便潜血検査で陽性を指摘された場合には、精密検査として大腸カメラを受けることが重要です。
一方で、大腸ポリープや早期の大腸がんでは、病変があっても便潜血検査が陰性になることがあります。
そのため、「脂質異常症だから大腸カメラを受ける」というよりも、年齢や症状、便潜血検査の結果、大腸ポリープの既往歴、家族歴などを総合して、大腸カメラの必要性を考えていくことが大切です。
脂質異常症の治療では、薬による治療だけでなく、食事や運動などの生活習慣を見直すことも重要です。
これは大腸がんの予防を考えるうえでも共通する部分があります。
国立がん研究センターでは、がん予防のために、たばこを吸わない、飲酒をひかえる、適正な体重を保つ、日常生活で身体を動かすことなどを推奨しています。
健康診断でコレステロールや中性脂肪を指摘された場合には、数値だけを見るのではなく、これまでの食生活や運動習慣を振り返ってみることも大切です。
脂質異常症と大腸がんについては、特に中性脂肪が高い人で大腸がんとの関連を示す研究がありますが、脂質異常症そのものが大腸がんの直接的な原因であるとは言い切れません。
一方で、肥満、運動不足、飲酒など、脂質異常症と大腸がんに共通する生活習慣もあります。
そのため、コレステロールや中性脂肪が高い方は、脂質異常症の治療・生活習慣の改善を行うとともに、年齢や便潜血検査の結果、症状、家族歴などにも目を向けることが大切です。
便潜血陽性や血便、便通の変化などがある場合には、脂質異常症の有無にかかわらず、大腸カメラによる詳しい検査をご検討ください。

日本内科学会総合内科専門医・指導医
日本消化器内視鏡学会専門医・指導医
日本消化器病学会専門医
専門は消化管、特に下部消化管(大腸など)。下部消化管の中でも腫瘍(がん)を専門に研鑽を積む。軸保持短縮大腸挿入法を考案・はじめられた本家本元の秋田赤十字病院で修行し、2018年に「あべ胃腸内視鏡・内科」を開業。患者さんに苦痛をなるべく与えない内視鏡検査にこだわり、患者さん一人一人に丁寧・安全に満足してもらえる、良質な大腸内視鏡検査を提供していくクリニックを目指しています。
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