生活習慣病とは食事、運動、飲酒・喫煙などの生活習慣が原因で発症する病気の総称です。 自覚症状がないまま進行する場合もありますので、日頃から生活習慣病に注意し、健康診断で血糖値や血圧値、脂質値などの異常を指摘された方は、そのまま放置せずにご相談ください。
高血圧
血圧とは、血管の中を血液が流れる際に、血管の壁にかかる圧力のことで、これが一定以上に高い状態がつづく病状です。
血管が痛めつけられ、その老化現象(動脈硬化)が早くすすんでしまいます。脳卒中や心筋梗塞、腎不全など全身の疾患をひきおこします。
診断基準
成人における血圧値の分類(mmHg)
高血圧を放置していると・・
高血圧によって最もリスクが高くなるのが、脳卒中(脳梗塞、脳出血、くも膜下出血など)です。
収縮期血圧(最高血圧)が10mmHg上昇すると、脳卒中のリスクが男性で約20%、女性で約15%高くなります。脳卒中は命が助かっても、運動障害や言語障害が残りやすく、長期のリハビリが必要となることも少なくありません。高血圧は、心疾患のリスクも高めます。特に、男性の場合は影響が大きく、収縮期血圧が10mmHg高くなると、心筋梗塞や狭心症の危険度が約15%増加します。
血圧が高いと腎臓にも大きな負担がかかり、血液中のナトリウムなどの排泄がうまくいかず、さらに血圧が上昇する悪循環を起こしやすくなります。慢性腎臓病を起こすと、脳卒中や心筋梗塞による死亡率も高くなってしまいます。
一般に血圧は、高齢になるほど高くなる傾向があります。しかし、日本では、30、40歳代の比較的若い世代でも、すでに約半数近くの人が高血圧の状態です。しかもこの世代の場合、80〜90%もの人が治療を受けていません。高血圧の状態を長期間放置していると、それだけ血管の傷みも進み、いきなり脳卒中や心筋梗塞を起こしてしまうかもしれません。
食生活の見直し
日本人の高血圧の最大の原因とされるのが、食塩摂取量の多さです。日本人の1日の食塩摂取量は約10gにもなります(国民健康・栄養調査2014年)。日本高血圧学会のガイドラインでは、1日当たりの塩分(食塩)摂取量の目標を「6g未満」と設定しています。
薄味に少しずつ慣れるようにしましょう。ラーメンやそば、うどんの汁は残す。寿司につけるしょうゆの量を減らす。揚げ物や焼肉などは、しょうゆやソースでなく、レモンやユズ、こしょう、ごまで食べる。天然だし(昆布、シイタケなど)をつかい、しょうゆや塩を減らす。ミネラル類もしっかりとりましょう。
カリウムには、腎臓から余分な塩分(ナトリウム)を排出する働きがあります。マグネシウムは、その働きを助けます。カリウムは野菜や果物、海藻類、豆類などに多く含まれています。中でも野菜類や海藻類はカロリーが低く、メタボリックシンドロームの人にもいいので、おすすめされています。
また、マグネシウムは、海藻やナッツ類、豆類などに含まれています。野菜サラダに豆やナッツを入れるのもいい方法です。ただし、血糖値が高い人は果糖の多い果物はお控えください。
また腎臓病の場合には、カリウムのとりすぎで悪化することもあるので、主治医にご相談下さい。
生活習慣の見直し
食生活・生活習慣の見直しをおこなっても血圧がさがらない場合には、健康寿命をながくする為に、薬をのむことも考えましょう。
肥満の解消
肥満は高血圧の大きな危険因子であることが明らかになっています。
特に、内臓脂肪型肥満は血圧上昇と関連が深く、減量すると血圧が下がるという報告があります。
節酒
飲酒習慣は血圧上昇の原因となります。エタノールで男性20〜30ml(おおよそ日本酒1合、ビール中瓶1本、焼酎半合弱、ウイスキー・ブランデーダブル1杯、ワイン2杯弱に相当)/日以下、女性はその約半分にしましょう。
適度な運動
ウォーキング、アクアサイズ(水中運動)、サイクリングなどの有酸素運動を行いましょう。
軽く汗ばむ程度、軽く息がはずむ程度の運動を1日に30分程度、週に3~4回行いましょう。
ストレスをためない
ストレスは血圧を一時的に上昇させます。ストレスが繰り返されると、交感神経の緊張状態が続いて血管は収縮し、血圧は高い状態を持続するようになります。
脂質異常症
脂質異常症とは血液中の脂質、つまりコレステロールや中性脂肪が増えすぎる病気のことです。以前は高脂血症と呼ばれていました。
血液中に余分な脂質が多くなると、動脈硬化を起こしやすくなり、心筋梗塞や脳卒中などのリスクが高くなります。
原因
主な原因は体によくない生活習慣だといわれています。喫煙や乱れた食生活(高カロリー、高脂肪)、運動不足などによって、血中の脂質(コレステロール、中性脂肪)が増えた状態がこの病気で、生活習慣を改善することによって脂質の値も改善することがほとんどです。
また加齢によって発症しやすくなることも知られ、男性は40歳以降、女性も閉経後に、脂質異常症は多く見られます。ほかにも、遺伝的要因による家族性脂質異常症やほかの病気が原因の二次性脂質異常症などもあります。
高脂血症(脂質異常症)単独では自覚症状がほとんどありません。
しかし血管にコレステロール(とくに悪玉のLDLコレステロール)や中性脂肪が蓄積し続けると、それらが血管の壁に付着して血管が硬くなる動脈硬化という症状を起こします。
動脈硬化は、心筋梗塞や脳梗塞の原因になるほか、高血圧を引き起こしたり、腎臓病などの原因となります。
検査・診断
健康診断の結果によって、この病気に気づく人がほとんどです。
治療に先立ち、禁煙、食事内容の改善、運動など、生活習慣の改善で動脈硬化を予防することが重要です。生活習慣の改善で効果が見られない場合は、脂質を減らす薬による薬物療法を行うことになります。ほかの病気が原因で脂質異常を起こす二次性脂質異常症の場合は、原因疾患の治療が優先されます。食事や間食、飲酒を通じてとりすぎたエネルギーを蓄積しないために、息が切れない程度の有酸素運動を心がけることが大事です。ウォーキングや軽いジョギング、サイクリングなど、生活に取り入れやすいものから試してみましょう。
またタバコやストレスも脂肪濃度を高めるリスクがありますから、気をつける必要があります。
冠動脈疾患予防からみたLDLコレステロール管理目標フローチャート
脂質異常症のスクリーニング LDLコレステロール120mg/dL以上
◆ 冠動脈疾患の既往歴があるか?
↓ なしの場合
◆ 以下のいずれかがあるか?
- 糖尿病(耐糖能異常は含まない)
- 慢性腎臓病(CKD)
- 非心原性脳梗塞
- 抹消動脈疾患(PAD)
↓ なしの場合
◆ 以下の危険因子の個数をカウントする
- 喫煙
- 高血圧
- 低HDLコレステロール血症
- 耐糖能異常
- 早発性冠動脈疾患家族歴
第1度近親者かつ発症時の年齢が男性55歳未満、女性65歳未満
注:家族歴等不明の場合は0個としてカウントする。
◆ リスク区分
性別 |
年齢 |
危険因子の個数 |
分類 |
男性 |
40〜59歳 |
0個 |
低リスク |
1個 |
中リスク |
2個以上 |
高リスク |
60~74歳 |
0個 |
中リスク |
1個 |
高リスク |
2個以上 |
高リスク |
女性 |
40~59歳 |
0個 |
低リスク |
1個 |
低リスク |
2個以上 |
中リスク |
60~74歳 |
0個 |
中リスク |
1個 |
中リスク |
2個以上 |
高リスク |
管理目標値表
* 家族性高コレステロール血症、急性冠症候群の場合。糖尿病で[非心原性脳梗塞、末梢動脈疾患(PAD)、慢性腎臓病(CKD)、メタボリックシンドローム、主要危険因子の重複、喫煙]を合併する場合。
糖尿病
糖尿病とは血液中のブドウ糖(血糖)が多くなる病気です。
原因
糖尿病ではインスリンが少なくなったり、効きが悪くなったりして、ブドウ糖をうまく血液中から体内に取り込めなくなってしまいます。そして血糖値が高い状態(高血糖)が長く続くと、さまざまな病気(糖尿病合併症)をひきおこします。
糖尿病には「1型糖尿病」と「2型糖尿病」があります。日本では、95%以上の糖尿病患者さんが2型糖尿病です。
2型糖尿病は、いくつかの遺伝因子と“食べすぎ”“運動不足”“ストレス”といった生活習慣が加わって、インスリンが効かなくなって発症します。
初期の糖尿病は自覚症状がほとんどありません。そのため、健康診断で「糖尿病」と言われても、ピンとこなくて放置する方もいるかもしれません。しかし、自覚症状が出たときには、すでに合併症が進んでいることも少なくありません。
糖尿病の代表的な症状
- のどがすぐ乾き、水をよく飲む
- おしっこの回数が多く、量が多い
- なんだか疲れやすい
- お腹がすいてよく食べるのに、体重が減っていく
- 足がつったり、しびれたりする
- 目がかすんだり、黒い点が見えたりする
- ちょっとした傷が治りにくい
- 男性の場合、性機能の問題が生じる(ED)
糖尿病の合併症
血糖値が高い状態は血管を傷つけます。糖尿病は、長い時間をかけて血管をボロボロにしていく病気と言えます。
特に細い血管(毛細血管)は、もともと血管自体がもろく、血糖値が高い状態の影響が早いうちから出てしまいます。毛細血管が集中する網膜、腎臓、手足に現れる障害の「糖尿病網膜症」「糖尿病腎症」「糖尿病神経障害」は糖尿病の三大合併症(細小血管障害)と言われ糖尿病で起こる確率が高い合併症です。
血糖値が高い状態は、毛細血管だけではなく太い血管にも影響を与えます。大血管障害と呼ばれる、脳梗塞・心筋梗塞など直接命にかかわる病気を引き起こすこともあります。
これらの合併症は、糖尿病の可能性がある、あるいは糖尿病と診断されたときから進行し、5~10年くらいで出現すると考えられています。血糖値が高い状態をそのままにしておくと、失明や透析や手足の壊疽えそを引き起こします。反対に今の生活習慣を改善し、正しい治療をすれば合併症を防ぎ、普通の人と変わらない生活が送れます。
治療
食事療法
具体的な方法は、あなたが1日に必要なエネルギー量をかかりつけ医に決めてもらいます。
そして、実際に食品を選ぶにあたっては「糖尿病食事療法のための食品交換表」(日本糖尿病学会)という表がよく利用されています。食品交換表では、ふだん食べているさまざまな食品が「80kcalの分量=1単位」として、栄養素別(5グループ+調味料)に紹介されています。
例えば、ご飯1/2杯、りんご(中程度)、鯛の切り身一切れ(80g)などは全て1単位になります。
医師から指示されている1日の総摂取エネルギー量が1,600kcalの場合、1日20単位の食品と交換できますが、栄養素がかたよらないように選ぶことが大切です。
運動療法
運動療法は、「血糖値を下げる」「体重が減る」「血液の循環が良くなる」など、たくさんのメリットがありますが、最大のメリットは「インスリンが効きやすい体になる」ことです。
肥満のある2型糖尿病患者さんでは、インスリンに対して筋肉細胞や脂肪細胞の反応が鈍くなっていますが、運動を続けることによってこのような状態が改善されます。
運動としては、酸素を十分に取り入れて、体全体の筋肉をつかう有酸素運動が効果的だといわれています。有酸素運動は、1回に20分から40分行い、週3回程度行うとよいといわれています。無理なくできる運動を生活に取り入れて、習慣にして長く続けることが大切です。
運動する時間がない場合は、通勤のときに一駅歩く、外出中はなるべく階段を使う、といった工夫をしてみましょう。
有酸素運動の例
- ウォーキング
- 自転車
- 水泳
- ジョギング
- ラジオ体操
運動療法で気をつけないといけないことは?
飲み薬(経口血糖降下薬)やインスリン療法などで薬物療法を実施している患者さんは、運動中に低血糖になる可能性があります。自分の使用しているお薬について、低血糖の可能性をかかりつけ医に確認しましょう。運動する時間帯は、低血糖の心配が少ない食後に行うとよいでしょう。
薬物療法
糖尿病の薬にはいろいろな種類があります。薬の種類としては、飲み薬と注射薬があります。
飲み薬では、インスリンの分泌を良くするもの・効きを良くするもの、食事でとった糖の分解・吸収を遅らせるもの、糖の排泄を促すものがあります。注射にはインスリンの分泌を促すものや、インスリンそのものを外から補うものがあります。
高尿酸血症
高尿酸血症とは、血液中の尿酸値が、通常よりも高い状態です。
尿酸が過剰になると体内で析出して結晶を作り痛風と呼ばれる病気を発症することがあります。
原因
高尿酸血症は、主に下記の3つが原因となり発症します。
■腎臓からの排泄低下
■尿酸の産生増加
■プリン体の摂取量増加
症状
性・年齢を問わず血液中の尿酸が血清尿酸値7.0㎎/dlを超えると高尿酸血症と診断されます。
高尿酸血症が長期化すると尿酸が結晶化し全身で悪さをします。関節に溜まれば痛風発作リスクを高め,皮下組織や関節などに沈着すれば痛風結節というコブのようなものを作ります。腎臓の中に沈着すると,痛風腎を引き起こし腎臓の機能を低下させます。老廃物を尿として排泄できない腎不全にまで悪化すれば,透析を受けなければなりません。尿管結石を形成し、激痛を引き起こすこともあります。
治療
高尿酸血症は肥満者に多くみられ、多くの場合は減量することで尿酸値が低下してきますが、肥満をなくし、適正体重の維持が大切です。
尿酸値が高くなる原因の1つは食品に含まれるプリン体の取り過ぎです。プリン体を多く含む動物の内臓や魚の干物は食べ過ぎてはいけません。プリン体は体内でも作られ,肝臓で尿酸に変わり尿として排泄されます。肥満になると尿酸を作りやすく排泄しにくい状態になりますので,食べ過ぎをやめて適正な体重に戻すことが,プリン体の摂取制限よりも大切だと最近では考えられています。
尿量が増えれば尿と一緒に多くの尿酸を排泄できますので,水は1日2リットル以上飲むことが推奨されます。
尿をアルカリ性に近づける海藻や野菜は尿路結石の予防に有効です。
アルコールはプリン体の多いビールに限らず、アルコール自体に尿酸値を上げる働きがあるとされています。